スイーツ王子は甘くない⁉

 上履きに履き替え、階段をのぼろうとしたとき、一階と二階の間の踊り場の窓からビューッと強い風が吹きおろしてきた。

 すぐ横の掲示板に貼られた掲示物が、バタバタと風に煽られている音がする。

 わわっ。画鋲が外れて、今にも飛んでいってしまいそう!


 慌てて左手で押さえると、使われていない画鋲を右手で外して両端を留める。

 はぁ~、危なかった。

 改めて階段をのぼろうとして、今自分が留めた掲示物に目が吸い寄せられた。


 ……『転科制度』?

 試験に合格すれば、スイーツ科から特進科、特進科からスイーツ科への転科が認められる——。


 文字を追っていくうちに、心臓の鼓動がどんどん大きくなる。

 これだ。こんなチャンスが、まだあったなんて。

 うれしすぎて、思わず緩む口元をキュッと引き締めると、わたしは教室のある三階まで駆け上がった。


 教室に荷物を置くと、そのままUターンして教室を飛び出し、職員室へと一直線で向かう。


「あのっ、転科制度っていうのがあるって、掲示板で見たんですけど」

 職員室で、担任の篠森先生に声を掛けると、先生が顔を上げ、わたしを見た。


「ああ、あれな。あるにはある。まあ、過去に一度も利用した生徒はいないがな」

「で、でも、できるんですよね?」

 先生の返答に若干不安になりながら、もう一度確認する。


「……ちょっと待て、春風。ひょっとして、転科するつもりなのか?」

 篠森先生が、眉間にシワを寄せる。


 うぅっ。これは、あまりよくない流れな気がする。