スイーツ王子は甘くない⁉

 本当は、また誘ってくれてめちゃくちゃうれしいのに、思わず思っていることと反対のことを言ってしまう。

 だって、今まで考えたこともなかった思考に頭の中が支配されて、パンク寸前なんだもん……!


 それを聞いたクロくんが、ぴたりと足を止める。


「……そうだな。ムリを言って悪かった。忘れてくれ」

 淡々とした調子でそれだけ言うと、すたすたとまた歩き出す。


 わたし、間違えちゃった……?

 クロくんの背中はどんどん小さくなっていくけれど、わたしの足は止まったまま。


 やだ。置いてかないで。一人にしないで……。


「待って! やっぱりわたし……行きたいです。お店、連れてってください」

 小走りで追いかけ、クロくんの腕を掴む。

 手が小刻みに震える。


「お願い。……いなくならないで」

「さっきも言ってたけど、いったいどうした?」


 こんなこと、きっと誰に言っても信じてもらえない。

 でも、わたしの中だけではどうにもできなくなって、クロくんに全部ぶちまけた。


 わたしの特訓を手伝ってくれていた人たちがいたこと。

 その人たちが、消えてしまったこと。


 クロくんは、笑わずに、じっと黙ってわたしの話を聞いてくれた。