「クロ……じゃなくて、涼真、先輩……?」


『クロくん』って呼ばれるの、すごくイヤそうだったよね。

 わたし、シロくんがそう呼んでたから、そういう名前だと思って、ずっとそう呼んでた。

 そのたびにイヤな思いをさせてたってこと?

 うわっ、どうしよう……。


「心愛は……別にそのままでいい」

「『黒井涼真』で『クロくん』か。全人類に対して不愛想な涼真にはかわいすぎじゃね?」

「だから、おまえらは呼ぶなって言ってるだろ」

「お~、こわい、こわい」

 そう言って、チャラそうな男子が肩をすくめる。


「あの、みなさんは……」

「ほんとに僕らのこと知らないんだ。僕は和菓子専攻の天利琥太郎。中三だ」

 長めの黒髪の男子——琥太郎先輩が、淡々と自己紹介する。


「俺は焼き菓子専攻の佐東琉生。自分らで言うのもなんだけど、俺ら四人で『スイーツ王子』なんて呼ばれてるらしい」

 チャラい雰囲気の琉生先輩が、そう言って肩をすくめる。


「オレはケーキ専攻の生田伊吹。一応ここにいる四人で、それぞれの専攻のトップを務めてる。これからよろしくな!」

 短髪の伊吹先輩が元気よく言って、ニカッと笑う。


「えっと……一年の、春風心愛です。よろしくお願いいたします」


 そっか。この人たちが、ホンモノのスイーツ王子なんだ。

 さっきクロくんのことを『チョコレートの王子様』なんて言ってたし、やっぱりクロくんもホンモノのスイーツ王子だったんだ。