スイーツ王子は甘くない⁉

「次、ボクにちょーだい」

「はい、ちょっと待ってくださいね」

「オレ、一番でかいヤツ!」

「どれも同じに見えるけど?」


 変わらずワイワイ楽しいおしゃべりが絶えないみんなと一緒に、わたしもケーキを頬張る。

 こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。


「ちょ……なに泣いてんだよ、心愛」

「えっ? あ、あれっ、おかしいなぁ」


 泣いてるつもりなんて全然なかったのに、ボロボロと零れ落ちる涙が止まらない。


「塩辛いケーキになっちゃうよ?」

「心愛ちゃんには、笑顔が一番似合うんだから」

「そうですよ。笑ってください」

「うん……。おいしいね。みんなで食べると、とってもおいしい」

 無理やり笑顔を浮かべて見せると、みんながにっこり笑って返してくれる。


「あとは、両親の説得だな」

「……やっぱり、みんなも知ってるんだね」


 だって、わたしの言葉にできない思いを込めて、みんなのことをわたしが作ったんだもんね。


「大丈夫。こんなに努力したんだから、きっと心愛ちゃんのお父さんとお母さんだって、わかってくれるよ」


「そうだ。これ、ボクの代わりに御守りとして持っててくれる?」

 そう言いながら、イチゴくんがポケットから取り出したのは——。