スイーツ王子は甘くない⁉

「ただいまー。ごめんね、心愛。今日も遅くなっちゃって」

「おかえりなさい、お父さん、お母さん。あのね、志望校のことなんだけどっ」

 午後八時過ぎに帰ってきた両親の元へと走ると、タブレットの画面を二人に見せる。

「わたし、この学校に行きたい! ここのね——」

「夢見学園ね。うん、お母さんもいいと思うわ。ここの卒業生には、法律関係のお仕事をしている人も多いのよね」

「そうだな。ここの特進科は穏やかな校風だって聞いているし、心愛に合っているんじゃないか」

「え、ちがっ……」


 特進科じゃなくて、わたし、スイーツ科に行きたいの……って言うだけなのに。

 お父さんとお母さんはなんて言うだろうって思ったら、それ以上なにも言えなくなった。


 ——みんなを笑顔にできるお仕事、弁護士じゃなくてもあるんだよ?

 ——わたし、おいしいお菓子でみんなを笑顔にできる人になりたいの。


 そのとき言えなかった言葉は、お菓子作りへの強い思いとともに、心の奥底に封印したんだ。