あの後も私の存在に救われてるといって、輝くんは話続けてそれを黙って聞いていた。
輝くんは、母親が浮気性でありそれが原因で喧嘩が絶えなかったとか…いつも顔色を伺って生きてきたから、私が悩んでたりしてる時はすごいわかりやすいんだって。
「はい、裏門着いたよ。隼太クンと仲良くね?」
「ありがとう」
「うん、行ってらっしゃい」
微笑みながら手を振って見送る輝くんに背を向けたけど、やっぱりどうしても伝えたくて踵を返す。
「輝くん、私は輝くんを獣ってほんとに思ったことないし、愛を知らなくてどこか欠落してもない。 ただ愛だと自覚がないだけ」
「自覚がないってどーゆーこと?」
「困ってる私に手を差し伸べて、助けてくれるその優しさは間違いなく愛だよ。 じゃあ、今度こそ行ってきます」
私はその場で固まる彼の返答を待たずに、隼太くんのもとに駆け出した。
だから、
「んとに、ズルいなあ…」
と呟く声も、頬赤く染めた輝くんの表情も私は知らなかった。


