私が隼太くんのそばにいれるのは、私が冷静な判断をして敵にビンタをした“ベル”だから。
だから、ドキドキする度に心に何重にも鍵をする。
私は…隼太くんを何も知らない。
獣と呼ばれる理由も、瞳に強い光がなく時折寂しそうにする理由も……。
ここまで考えれば、私の胸は握りしめられたかのように苦しくなる。
「まあ、本の世界にずっといた子が今ここで認めろと言っても無理よね。ゆっくり考えればいいんじゃない?」
「う、うん…そうだよね!まずは隼太くんを知ることから始めてみる」
「あ〜やっぱ七瀬可愛い!照れてるところずっと見てたいけどそれ隠そうか」
「ありがとう〜」
私が里菜ちゃんにキスマークを隠してとお願いされることを想定していたらしく、すぐに大きなポーチから色々道具を出す。
ファンデーションに、コンシーラー、そしてパウダーと言われるものを順番に重ねてくれた。
完成した時には、よく近くまで見ないとわからないほどのクオリティにしてくれて1日何事もなく過ごしたのだ。


