本人はその事に気づいてないらしく、ナイショねって付け足した。
つまり…口調が荒くても耳が動いていれば怒ってないってことだよね?
記憶を辿っていると、ドアが開くと同時に颯くんの声がする。
「おいポンコツ、あんたが言ってた本ってこれでいいの?」
「うんそれ!わがまま聞いてくれてありがとう」
「…っ!べ、別にこれが仕事だからいちいちお礼言うなよめんどくせーから」
「それでも言いたいの。ありがとう」
「あ…っそ、好きにすれば」
ふいっと私に背を向けて、今まではまたやらかした、余計に嫌われたかもとか思ってたけど…。
ちらっと輝くんの言う通りに耳を見れば、りんごのように真っ赤に染まってピクピク動いていた。
これって…!照れてる時と嬉しい時。
か、かわいい…っ!
「なに1人でニヤついてんのあんた」
「え?いや、この本好きなやつだから嬉しいなあって」
「変なの」
セーフ、誤魔化せた。
颯くんの意外な一面知れたから笑ってましたなんて口が裂けても言えないよ。
それに、久々に好きな本が手元にあって嬉しいのもあながち嘘ではないから。
寮で暮らすのに本を持っていくと、狭くなってしまうためほとんど実家に置いてきてしまったのだ。
だから、この本が手元にきてほんとに良かった。
今日の夜、作戦を決行することができる。


