私のクラス2年C組の前へ立って、すう、とひとつ息を吸った。


なぜかって、生まれて一度も遅刻・早退をしたことがないから。



この扉を開ければ、ほとんどの人はその扉を見るはず。

実際、私も遅刻してきた人が教室へ入る時に先生の話を聞いていても、一度はその方向を見る。



更に、私の隣には眩しく輝く顔面が綺麗な男の子がいるとなれば目立つこと間違いなし。




「ねえ、なにやってんの?」


「今開けたら目立つなあって考えてて、開けるの戸惑っちゃった」


「なにくだらない事考えてんの。俺開けるから」



「ちょ、まっ───」



て、と最後まで言い切る前に颯くんはなんの躊躇いもなく扉をガラっと開けた。



「……」



ほら、みんな見てる……っ!


どんな視線が向けられているのか考えたらいたたまれない気持ちになって、ギュッと無意識に颯くんの制服の裾を掴む。



「(ちょ、ポンコツ。そう簡単に男に触れんなよ)」



ひ……っ!

顔真っ赤になって相当ご立腹。
迷惑かけないって昨日言ったそばから、私は怒らせてしまったのだ。


私にしか聞こえない声で言う颯くんは、表情とは違くてどこか焦っているような話し方…なのは気のせいと思うことにする。



焦るどころか絶対ガチ切れなのだから。



「そ、それは、ごめんなさい…、」