「えと、いらなかったら返品可能…です」
「んなわけない、お前の全部がほしい」
片方の手が私の頬に優しく添えた。
「だけど、俺が思ってる事と違ったりしない?」
こくんと首を縦に1回振ると、おいでと言われて隼太くんの元へ引き寄せられる。
これからが本番なのに、隼太くんの触れ方と名前を呼ぶ声が優しくて…涙が出そうだった。
「七瀬、可愛い」
「…っ!」
また、私の耳元で囁いてる…!
しかも、ビクって身体が揺れちゃったから、隼太くんが笑う気配を感じた。
私の顎を掬って隼太くんと視線が合う。
反対側の手で私の髪を撫でたあと静かに、唇が触れた。
「……」
触れただけなのに、いつも以上に胸の奥がじんわり熱くなって、息が苦しい。
目のふちに涙が溜まって、それが零れないように耐えている。
「怖い?」
「だいじょうぶ…隼太くんだから怖くない。私に触れて…愛して」
「お願いだからこれ以上煽るようなこと言わないで。ほんとに限界だから」
理性をギリギリで保っている隼太くんは、囁きと同時に首元に柔らかいキス。
そこから頬、こめかみ、耳へ───
ひとつずつ丁寧に落とされていく。
「ひゃ……っ」
小さく声が漏れて、隼太くんの呼吸がひとつ乱れた。
「煽らないでって言ったらそばから、可愛い声出しちゃって…気持ちーね」
「い、意地悪言わないで…」
ふっと笑って、ひたすら優しい目で隼太くんは見てくれた。
何度も、私の名前を呼んで可愛いと言ってくれて。
「世界一可愛い俺の七瀬」
もう一度、唇が触れた。
さっきより深くて、息が奪われていくみたい。
「どうか俺に全部預けて。 今夜は離さない」
その言葉を最後に部屋の空気がゆっくり溶けていく。
──この先は、灯りを落とした部屋の私たちだけの秘密。
夜が明ける頃、私は…
「私も隼太くんを愛してる」
彼の腕の中で囁くのだった。


