獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める

───昼休み

人気のない屋上で、私はそわそわしながら小さな包みを差し出した。



「今日は頑張って隼太くんにお弁当作ったの!」

「俺に?」

「お母さんのお手伝いで、料理はやってたから失敗はしてない…と思う」



色合いも茶色一色にならないように、気をつけながら詰めたつもり。


隼太くんはお弁当を開けると、僅かに目を見開く。

そして、珍しくストレートにおろしている髪を、細長い指が耳にかける。


耳元に唇を近づけて、隼太くんの吐息がかかった。



「七瀬、ありがとう」

「…~~っ!」



私が耳弱いのわかっててわざとやってる…っ!

たまにこうやって、隼太くんは少年のように幼く笑いながら揶揄うのだ。



「ほら食べよう!」

「はは、顔赤くしちゃって可愛いね」


目を細めて笑う隼太くん。


「ね、食べさせてよ」

「ゴホッゴホッ」



予想外な事を言うから、飲んでいた水が変なところに入ってむせてしまう。

そんな私を背中さすって面白がっている。



「俺、お誕生日だよ?」

「う…わかった、何から食べたい?」

「どれも美味そう」

「じゃあ、ベジタブルファーストってことでミニトマトね」