獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める

───お誕生日当日


「隼太くんと2人で登校って初めてだね」

「随分と嬉しそうじゃん」

「当たり前だよ!女子高生は、こうやって他愛ない話をしながら、笑うことに幸せを感じるんだよ」



こうやって一緒に並んで、学校へ行くと私と同じ高校生なんだなって改めて思う。

いつも冷静で、大人びているから…。


それにしても、どの角度から見ても美形で、制服は着崩されいるけど似合っている。


せっかくの2人きりの登校が叶ったから、今日は存分に私がやりたかったことをやる!


まず、授業は───


【隼太くんお誕生日おめでとう】


ノートの隅に書いて、隼太くんの方へスライドさせた。

これって席が隣じゃないとできないことだから。


隼太くんはすぐに気づいてくれた、その下に何かを書いてくれた。



【ありがとう。でも、それ朝一で聞いたよ?】

【今日1日何回でも言いたいの!大好きな人のお誕生日だもん】



そこからもラリーが続いていたのだけど、しばらく隼太くんから返ってこなくて待っていると…


「ふふっ」


私が思わず笑ってしまって、慌てて両手で口を抑えた。

隼太くんは、一生懸命絵を書いていたらしい。


何かって今一生懸命、授業をしてくれている先生の似顔絵でお世辞にも上手とは言えないのだ。


腕の関節がとんでもない方向に曲がって、しかもその関節が2つある…


けど一つ一つの特徴は掴めていて、憎めない絵になっている。


隼太くんって絵描くの苦手なんだ。


そう言おうと彼の方へ向こうとすると、それよりも先に私の手を握ってもう片方は人差し指を口に当てている。


私だけが知っている隼太くんの苦手なこと。


その後の授業は、周りにバレないように机の下で手を繋いでいた。