「隼太くんからあなた達の話は聞いたよ」
もう一度ひどく冷めた瞳に向かって言葉を紡ぐ。
「私には、あなたの憎しみや悲しみがわからない。…その気持ちを否定することもできない。 でも、隼太くんに復讐してもあなたの憎しみは消えない」
「てめえ、俺の何がわかるんだよ!よほど死にてーらしいな」
本当は柚木くんもわかっているはずなのに、認めたくない気持ちが葛藤している。
怒りに震えて、私に迫って片手で首元を掴んでそのまま壁に押し付けられた。
苦しい…っ、でも、払いのけようとしても力が強い。
私が伝えたいことを言わなきゃ…っ
「あなたは…っ、誰よりも憎しみや悲しみを知っている…、だから、その手でっ…同じ憎しみや悲しみを生み出すのはやめて」
今の言葉で少しだけ首元を掴んでいた手が緩んだ。
すかさずその手を払い除けて、思いきり息を吸って呼吸を整える。
「誰にだって大切な人がいて、誰だってそれを知ってる。 隼太くんを大切に想う人がいることを、あなたは知ってるはず。それが私にもわかること」
「笑わせんなよ、俺に大切な人?いるわけねえ、俺はずっと孤独で生きてきた」
「孤独は、あなたを想う気持ちを無下にしたとき。あなたには、まだあなたのことを想っている人がいるでしょ?」


