今ならまだ、走れると判断して扉に向かうと、背後から腕を回されて身動きが取れなくなった。
「おっと…せっかくここまで来てくれたのに、逃げられるのは困る。しかも、キミ賢いから色々と察しちゃってるね?」
「離して…っ!」
「うちの王様がベルに用事があるんだって」
「私はない。お願い…隼太くんのところに行かせて」
「そう焦らずとも、痛めつけて…最終的には2人とも仲良くあの世へ送ってやるよ」
私たちの会話を遮り、奥から出てきたのは隼太くんと同等…違う。
敵味方関係なく殺気を向ける男の子。
初めて会った隼太くんよりも、瞳に光がなく片耳にシルバーのリングピアスを揺らす彼は…
名前を聞かずともわかった。
彼が、青鷺火総長、柚木と呼ばれている人。
柚木くんが姿を現した途端、空気がガラッと変わって息苦しく感じた。


