子供扱いでもするように私の頭を撫でて、隼太くんは落ち着かせた。



「ごめん、七瀬に怒られるのは貴重だから。 危険なことをしたのは約束したでしょ?お前は必ず守るって」


「私は…、隼太くんが傷つくのが怖い」


「俺も同じ。お前だけは失いたくないんだよ」





隼太くんの言葉にいちいち心が揺さぶられてしまう。
何重にも心に鍵をかけているはずなのに。


私は隼太くんの彼女ではなく、ベルだから。


総長の女という肩書きはあるけどベル=両想いというわけではない。





「…私に隼太くんのこともっと教えて。 どんなに辛いことでももう、逃げたりしないから」


「晴人からもう聞いたでしょ? 俺は獣で、皆が嫌う黒金会の血が入ってる裏切り者」


「確かに晴人くんから聞いたけど、私は隼太くんの口から話を聞きたい」


「…生まれた頃から厄介者だった俺には、母さんが全てだった。どんなに孤独でも辛くてもひとりじゃなかったから」




想像を絶する辛い過去を隼太くんはゆっくりと紡いでいく。

その瞳には、冷酷無慈悲といわれた冷たさはなく悲しみに溢れた寂しさを宿していた。