「はっ、ここまで頭が回る女だと思わなかった」



「これ以上傷つけるのはやめてください」




正気を失っている瞳を真っ直ぐに見つめた。

どうか、私の声が届いてと念を込めるように。




──数秒の沈黙は誰かが扉を吹き飛ばす音で破られる。





「ななせ大丈夫か?」


「なあちゃんもだけど、颯クンの心配もしてあげなよ晴人クン」




晴人くんと輝くんが先頭にたって、鳳凰の仲間が黒金会の人達を囲んだ。

まるで囲碁で陣地をとったかのように。



さっきまでと空気が変わって、鳳凰が有利の状況になる。



晴人くんは隼太くんのそばに言って寄り添い、輝くんは颯くんの拘束を解いて鳳凰幹部集結となった。




だから私は、油断していた。
…黒田が最後の悪あがきで銃口を私に向けていたことに気付かずに。




「七瀬!」

「…え?」



隼太くんが駆け寄りながら私の名を呼ぶのと、バンッと運動会などでよく使うピストルよりも大きな爆発音が聞こえたのはほぼ同時だった。



隼太くんの右肩に赤いシミが滲み広がって、その場に倒れる。



すぐに隼太くんのもとへ走ったけど、目を瞑った状態で嫌な事ばかり考えてしまう。




「隼太くん…!やだよ、目を開けて!」


「…」


「隼太くん!!!!」



今までにないくらい大きな声で呼びかけても、反応がなかった。


ポタポタ大粒の涙がこぼれ落ちて、クリアだった視界はぼやける。



隼太くんを抱きしめながら私は、泣き崩れることしかできなかったのだった。