「んで、ベルって言うのはね、心の美しい女の人の事をいうんだって」



「心の美しい女の人…?」



「今の鳳凰ってそこまで悪い噂はないでしょ?あるとしたら、南高の青鷺火と対立してるとか、皇隼太様は強くて綺麗で残酷無慈悲だとか…」



「まあ、その程度の噂なら私も知ってるけど…」



というか、昨日少し巻き込まれましたと言える空気でもなくてそのまま里菜ちゃんの話の続きを聞く。




「昔の鳳凰は手がつけられないほど野蛮で、特に総長は1度喧嘩したら、相手が気絶しても殴り続けるほど凶暴だったんだって。そんな彼に真っ直ぐ向き合って、愛を教えたのが心の美しい女の人みたい」



「どうしてその人をベルと呼ぶの?」



「美しいってフランス語でbellだからって聞いたことある。まあ、近年の鳳凰はそんな荒れてないからベル=美しい女の人というよりは、ベル=総長の女に変わってきてるけどね」




里菜ちゃんから聞いた話は入学当初から噂にあったらしいけど、そんな大切なこと私は1年以上も知らなかったんだ…。


噂が気にならないくらい日々が充実していたのだと解釈することにした。



ちなみに心の美しい女の人がベルと呼ばれたのが、薔薇の花びらが全て散る頃だったらしくその名残があるのだとか。




「今日の放課後の放送ってつまり名前を呼ばれてしまえばその人の意思関係なく総長の女になるってこと?」



「そうなるね、七瀬ぐらいだよそんななりたくないって顔してるの」




「え…そんなに顔に出てた?」




「ばっちりね」