この恋は、終わらないと思ってた

「さっき、俺の勘違いで春瀬を怖がらせたでしょ? そのお詫び」


 気にしなくてもいいのに。
 だけど、こういうときはお言葉に甘えるのがいいんだって教えてもらったことがある。


「……ありがとう、ございます」


 メニュー表を見ると、美味しそうなものがたくさんあった。
 これだけあると、迷ってしまう。


「俺はやっぱり麻婆かな。春瀬は?」
「えっと……じゃあ、私も、同じもの……」
「本当に? 遠慮せず、好きなもの頼んでいいんだよ?」


 先輩の眼は、それでいいの?と聞いて来ている。


 よくはない。
 辛いもの、苦手だから。


 私はもう一度メニューを見る。


「……天津飯で」
「了解」


 先輩の笑みを、真正面から見るのはなかなかの破壊力がある。


 そして先輩は慣れたように注文をした。


「春瀬って、写真が好きなの?」


 注文した品が届くまでの間、気まずい時間が流れるのかと思えば、先輩が話題を振ってくれた。


「好き、というか……日記みたいなもので」


 先輩は「へえ」と、興味がありそうでなさそうな相槌を打った。


「普通は文章で書くのが日記だと思うんですけど、私は言葉で気持ちを残すのが苦手で。だったら、見たものを残そうと思って、写真を撮っているんです」
「いいじゃん」


 お世辞かもしれない。
 それでも、そう言ってもらえてうれしかった。


「じゃあ、もっとSNS映えする店に行けばよかったかな」
「あ、いえ、そういうのは気にしたことなくて。だから、友達にもよく、私の投稿は地味だって言われるんですけど」
「春瀬、投稿とかしてるんだ? 見たい」


 興味津々のこの表情を見て、逃げられる人はいるだろうか。