この恋は、終わらないと思ってた

「……さっきの答えだけどさ。俺だったら、こんな俺のことなんて、もう忘れてよって思いでやるかなって思って」


 言葉が、返せない。


 凌空がそんなことを思ってるなんて考えたくないとか。
 私は、凌空のことを忘れたくないとか。


 言いたいことはたくさん思い浮かぶのに、先輩に言っていいのか、わからなかった。


「そういうときは、相手が、俺のいないところで思いっきり幸せにしてるところが見たい」
「……だから、カップルっぽい写真?」


 先輩は得意そうに頷く。


 凌空もそう願っているのかは、私にはわからない。
 だけど、一理あると思っている私もいた。


「……そこまで先輩に迷惑かけられないです」
「んー……俺的には、顔が映らなければ全然迷惑じゃないから、気にしなくていいよ。例えばほら、桜を背景に手でハート作ってみるとか」


 先輩は左手を挙げ、ハートの半分を作った。
 その様子は楽しそうで、迷惑ではないというのが、嘘ではないんだと感じた。


「どうして、こんな私に、そこまでしてくれるんですか?」
「んー……春瀬の笑った顔が、可愛かったから?」


 理由になっているようで、なっていない。


 その変な理由を聞いて、ふと私は考えすぎているのかもしれないと思った。


「……一枚だけ、いいですか?」
「もちろん」


 そして私は、先輩の左手に合うように右手でハートを作り、シャッターを押した。