好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

「距離を取るしかないねえ」

「でもこれからも少なくともバイト先と学校では顔を合わせないといけないから…」

「うーん」



2人で考えても答えは出なかった。



顔合わせたら好きだって思っちゃうもん…。



それに、この気持ちがなくなるのも…いやだ。



片思いって苦しい…。



亜子さんにご飯を奢ってもらって解散する。



帰り道をとぼとぼ歩いていたら、結くんにたまたま遭遇した。



「いま帰りか?」

「うん…」

「なんか元気ねえな」



さすが幼馴染…。



あたしの変化には昔からすぐ気が付いてくれる。



「カラオケでも行く?」

「えっ、行きたい!」



結くんがカラオケに連れて行ってくれた。



ありがたや…。



あたしは全力で歌って気持ちを発散させる。



なんか片思いの歌ばっかり…。



「…好きな人となんかあった?」



結くんが聞いてくる。



やっぱり分かる~…?



「あったよ…」

「小糸は分かりやすいよな…。そいつ、どんなやつなの?」

「風里先輩は…すっごく優しいの。それに、あたしの話をちゃんと聞いて受け止めてくれる」

「…例えばどんな?」

「市川さんのこと…話したときもね、なんでかあたしの気持ちを全部見透かすみたいに話聞いてくれるの」



そう…。



元はそうだった。



ただの憧れだった先輩があたしの内側に完全に入り込んできた瞬間だったの。