好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

だけど…。



「やだ! こわい! 滑れない~~~!」

「大丈夫大丈夫。板八の字にして」



思った以上に下手くそすぎる…。



スノボしてる先輩が教えてくれるんだけど、あたしはそこに突っ込む…。



もういや…。



先輩にも申し訳ない…。



陽鞠さんもギャーギャー言って渚さんに怒られてる。



そして、従兄の弥玖さんの彼女のちとせさんもあたしと同じ状況…。



「小糸ちゃん~、3人でゆっくり滑ろう…」

「そうしましょう…」



というわけでスキーの下手な女子陣はゆーっくりゆーっくり慎重に滑ることにした。



もう明日はやらない!



2人とも同じ気持ちみたいで、次の日はロッジでゆったり。



男性方には普通に今日もゲレンデに行ってもらってる。



風里先輩は「小糸ちゃんがいないなら俺も行かない!」って言ってたけど、そんなのあたしがお荷物すぎるから拒否した。



渋々…って後ろ姿でゲレンデに向かう姿はかわいかったけど。



今頃はきっと楽しんでくれてると思う。



「みんな、ケーキとか作らない?」



お母さんがあたしたちに声をかけてくれた。



「つくります!」



というわけで女子4人でケーキ作り~!



「いつもこういうのは海琉が作ってくれるんだけどさ、たまにはね」



海琉というのは先輩のお父さんの名前。



みんなでロッジのキッチンに集まってわいわいとケーキ作り。



男性方は今日の夜ごはんの買い出しに出ているらしい。



「みんなスキー下手で逃げ出してきたんだって?」



お母さんがケーキの生地を作りながら面白そうにあたしたちに言った。



「そうなんですよ~…。なんであれあんな難しいんですか?」

「あたしも学生のときやってたけど超下手だったよ。いっつも海琉にしがみついてた」

「じゃああたしたちと同じですね…」



やっぱそういうものか…。



「悠麗も玖麗も海琉も上手いからあたし一人置いてかれてたよ」

「ええ! それは寂しい」

「あたしがそうしてって言ったんだけどね~」



でもなんかこうやってお母さんやお姉さん、それにちとせさんと一緒に何かするっていうのは楽しいな…。



あたしも家族の一員として迎えられてるみたい…。



それからケーキが完成して、夜になって戻ってきたみんなに見せたら驚かれた。



あたしたちは得意げ。



みんなで顔を見合わせて笑顔になった。