好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

そう、あたしには市川さんの登場は急激な変化すぎて追いつけなかった。



あたしにも少し猶予が欲しいの…。



卒業するまでで良い。



卒業したら、あたしも今後どうしていくか考えるから。



このままこの家でお母さんと市川さんと暮らしていくのか、家を出るのか。



それも含めて考えるから…。



お母さんは、あたしの顔を見て、何度もうなずいた。



「ごめん、小糸…ごめんね」



あたしもただうなずくしかできなくて。



あたしはもう言いたいことは全部言ったよ。



もうこれ以上なにも言えない…。



それからお母さんにしばらく抱きしめられていた。



そう、求めていたの。このぬくもりを。



あたしはまだまだお母さんの子供でいたいの…。



次の日、何事もなかったかのようにお母さんと顔を合わせて、いつものようにバイトに行って。



風里先輩は今日も一日試験。



『頑張ってください!』



メッセージを送る。



昨日あたしが頑張ったことは、あとで風里先輩に聞いてもらおう。



それでいっぱい褒めてもらうの。



風里先輩も頑張ってるから、あたしも頑張れたよ。



それから一日バイトを頑張って、風里先輩といつもの公園で待ち合わせをして。



「小糸ちゃーん!」



その言葉に振り向くと、笑顔の風里先輩が両手を広げて立っていた。



あたしはそんな風里先輩の胸の中に飛び込む。



ああ…大好きだ。



全身が『大好き!』でいっぱいなの。



この感覚、風里先輩も分かってくれるかな?



「先輩、試験おつかれさまです! どうでした?」

「良い感じ~! ていうかね、今日に関しては全然減点理由が思いつかない」

「すごい! 天才じゃないですか」

「まあね~」