好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

「お母さん…」



テレビを見て笑ってるお母さんに、勇気を出して声をかけてみた。



「うん?」



お母さんが笑ったままあたしに顔を向ける。



「あたし…市川さんといると、苦しいよ…。苦しいの…」



やっとの思いで出した言葉。



これを言うだけでもどれだけのエネルギーがいるんだろう。



苦しい…。



「小糸…」



お母さんが真剣な顔になった。



それからテレビを消す。



「お母さんだって…あたしの気持ち、気づいてた…でしょ?」

「そうね…。気づいていたけど…慣れて欲しい、慣れてくれるって思ってた…」

「そんなのお母さんの勝手だよ…」



涙が出てる。



いつから泣いてたかなんて分からないや…。



だって心はずっと泣いてたから。



ずっとずっと、市川さんがうちに来たあの日から、あたしの心は泣き続けてる。



「あたし…、ずっとお母さんと2人でいたかった…っ。2人で頑張るんだって思ってた。お父さんと3人で暮らせなくなって、その日からあたしの地獄は始まったけど…、それでもっ…お母さんがそばにいてくれて良かったって思ってたんだよ」



涙は止まらない。



涙で声が詰まってうまくしゃべれない。



それでも今のあたしの一生懸命だ…。



お母さんはあたしのことを抱きしめた。



「小糸…ごめん。小糸が苦しいの、分かったうえでお母さんのエゴ…押し付けてたかも…。あたしにはあたしなりの考えがあってしてたことだけど、小糸のことを大人だって思いすぎてた…。もっと小糸と向き合うべきだったね…」



お母さんが抱きしめながらあたしの背中をさする。



その言葉に、その行動に、なんだかもっと涙が止まらなくなった。



「市川さんのこと、あたしも嫌いじゃないよ…っ。分かってる、良い人だって。だけどっ、一年前から急に、市川さんに慣らされるようにさせられてるのが…すごく苦しかった…。今も苦しいよっ…」

「ごめん、ごめんね…」

「お母さんが再婚したいのも分かってる。でもせめて…、せめて、あたしが卒業するまで…家に来るのは…待ってほしい…」



なんとか伝えたその言葉。