好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

お母さんと市川さんと囲む食卓。



お母さんと市川さんは何かしゃべって楽しそうにしてるけど、あたしは一緒に笑えない。



なんとか雰囲気に合わせようとして、察されないようにして、笑顔を作るので精一杯だ。



「今日はもう帰るね」

「えっ、そうなんですか」

「うん、明日会社の仲間と朝から釣りでね~。釣り道具が家にあるから」

「そう…ですか」



それから、お母さんに優しい笑顔を向ける市川さん。



お母さんも「気を付けてね」と市川さんに穏やかな笑顔を向けた。



愛し合ってるって分かる。



苦しい。



それを受け入れられない自分、どうすることもできない自分。



なんであたしがこんな仕打ちを受けないといけないの?



ううん、受け入れてやるしかないんだ。



色んな気持ちがせめぎ合ってる。



でも、気づいた。



あたし、お母さんに察してって思うばかりで、自分からほとんど何も言ってない…。



あたしが伝えるしかないんだ…。



市川さんが帰って行った。



食卓は、市川さんが片付けてくれたので綺麗。



食卓の真ん中には先輩がくれた花束が綺麗に活けてある。



なんだかそのお花があたしの心を見透かして、背中を押してくれてるように感じた。



「小糸、プリン食べる? 市川さんが買ってきてくれたの」

「食べる…」



テレビを見ながら、一緒にプリンを食べる。



市川さんのいない平日なんかはこういう日もあるけど。



考えてみれば、あたしにとって市川さんのいない日のお母さんとの時間って、現実逃避に使ってるだけみたい。



それくらい、あたしの中で市川さんの存在って大きくて脅威なのかも。