好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

「ただいまー」

「おかえり、小糸」



出迎えてくれたのは、お母さんと、その後ろに遠慮がちにいる市川さん。



そっか、市川さんがいる日だったね。



市川さんだって分かってるはずだ、あたしにあまりよく思われていないこと。



良い人なだけに、あたしはそれも心苦しい。



「2人にお土産買ってきた」



あたしがそう言うと、2人は「えっ」と戸惑いつつ嬉しそうな様子を見せた。



紅イモタルト。



あたしは箱から出して適当にリビングに置いた。



「勝手に食べていいので」

「ありがとう、小糸ちゃん」



微笑んでいる市川さんに、あたしも作り笑顔を返す。



それから、そんな2人を避けるようにしてお風呂に入って眠りについた。



その日の夢。



変な夢を見た。



あたしは小さな昆虫で、住処を奪われてるの。



だけど東から太陽が昇ってきて、次々と周りの植物が成長していく。



その太陽は、多分風里先輩だったと思う。



心を優しく照らした太陽は、あたしに新しい植物の住処を用意してくれた。



ずっとずっと、この暖かい日差しの下で息を吸って行きたいと願った。