好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

「ぶっ…」



あたしは口に入れたばかりのミートソースを吹き出す。



信じられない顔で亜子さんのことを見た。



亜子さんは笑いながらそんなあたしの口元を拭いた。



「驚かせちゃうよね~」

「え…いつの間にそんな関係に…?」

「ん~…別に仲良いとかでもなかったんだけどさ~、その日たまたま会ってね~…」



亜子さんは言いながら手元のパスタをフォークでひたすらぐるぐる巻いてる。



言い淀んでる…。



ハキハキした亜子さんが珍しい…。



「ほら、前にあたしが結人と2人でご飯食べたときあったじゃん。結人が鶴巻ちゃんのこと好きなのは見てすぐ分かったから、あの時は興味本位で話聞いてたのよ」

「…」

「で、それから別に何もなかったんだけど、あの日、たまたま会ったから『鶴巻ちゃんとその後どう?』って聞いたら玉砕したって聞いてさ~。慰めようと思ってご飯誘ったの。それを鶴巻ちゃんが見たんだと思うんだけど」



なるほど…。



あのとき話し込んで見えたのはそういうことだったんだ…。



でもそこから何が…。



「そのあと帰るかってなったんだけど、あたしが半分冗談で『あたしと寝る?』って聞いたら着いてきて…。多分結人もヤケになってたと思うんだけど。それでヤッちゃった~みたいな?」



亜子さんがわざとおどけて言った。



あたしはなんて言ったらいいか分からない。



だって亜子さんの顔があんまり明るくないし…。



「亜子さんは…結くんのことどう思ってるんですか?」

「ん~…よく分からない。でも寝ちゃったからね~…。気になるのは確かだよ」

「そうですか…」

「結人の中で鶴巻ちゃんへの気持ちって相当なものだし。好きになったらあたしが苦しむのは分かってるからね~」



あたしは何も言えなかった。



黙ってしまったあたしに、亜子さんがあたしのおでこを人差し指で突いた。