好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

そんなこと今まで一度だって考えたことがない。



結くんは一つ上の幼馴染のお兄ちゃんで。



結くんもそうだと思ってた…。



「俺と付き合って、小糸」

「結くん…」



真剣な顔であたしを見続ける結くんから、あたしはバッと視線を外す。



「あたし…結くんのこと、そんな風に見れない…」

「…」

「それに、何より…風里先輩しかあたしは見えないよ…」

「寂しい思いさせられても?」

「風里先輩は出来るだけあたしに寂しい思いさせないようにしてくれてる。あたしはそんな先輩が好き…」



先輩のこと以外なんにも見えない。



いくら寂しくたって、それだけが確固な思い。



「結くん、ごめんなさい。気持ちに応えられないことも、今まで気づかなかったことも。だけど、あたしには先輩だけだから」

「ああ…。知ってた。小糸があんなに幸せそうなの見たことなかったし。俺が入れるとも思ってなかったけど。ようやく自分の気持ち言えて良かった」

「あたしたち…まだ仲良い幼馴染でいられる?」

「それは…無理。小糸だって、俺の気持ち知った上で今まで通りなんて無理だろ?」



それは…。



たしかにそうだ…。



結くんはあたしに切なげに笑顔を向けた。



「ありがとな、小糸。ちゃんと俺の気持ちを知ってくれて。今はまだ分かんねえけど…ようやく吹っ切れる気がする」

「結くん…」

「じゃあ…俺は行くわ。もうすぐ暗くなるし気を付けて帰れよ?」

「うん…」



結くんはそう言ってあたしに背を向けた。



あたしはその背中をただ目で追うことしかできなくて…。



結くんがあたしを好きだった…。



今まで、どのくらい傷つけてきたんだろう…。



大切だった幼馴染が、いなくなってしまった…。



そう思うとなんだかちょっと切なくて。



頭の中に出てくる風里先輩の顔。



風里先輩には…言った方がいいよね…。



でも、あたしのせいで今大変な風里先輩に余計な雑念を与えたくない…。



それに、一番仲の良い男の子の友達から告白されたっていう後ろめたさもちょっとあって。



だって風里先輩に散々何もないただの幼馴染だって言って、仲良いところも見せてきた…。



結局、あたしは風里先輩にも誰にも言うことができなかった。