好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~

「つーか写真うめえな、やっぱ」



祖父ちゃんが言った。



「俺の事務所は入る気ねえの?」

「そうだねえ」

「お前が入ってくれたらすげえ嬉しいのにな」



祖父ちゃんが立ち上げて、今は母さんが社長をやっているカメラマンの事務所。



写真撮るのも好きだけど、事務所に入って縛られながらカメラ一本で何かするつもりは今のところない。



色んなことに挑戦してみたいし。



今はフリーでいろいろしようと思ってる。



祖父ちゃんも母さんもそこは尊重してくれてる。



その日の夜、いつも通り小糸ちゃんと電話。



「今日みんなに小糸ちゃんの写真見せたらみんな『かわいい』って言ってたよ」

≪風里先輩の親戚にあたしの写真が見られたんですか? は、恥ずかしい…≫

「ごめん、嫌だった?」

≪嫌じゃないですっ! むしろ嬉しい…。恥ずかしいけど…≫

「みんなにかわいいかわいい言われて鼻高かったよ。俺の彼女かわいいでしょ~って」

≪…≫



あっ、電話の向こうで照れてるな。



いつもそうやって良い反応してくれるからからかい甲斐があるんだよねえ。



「あっそういえば…」



俺は大事なことを言わないといけないのを思い出した。



≪なんですか?≫

「この前美大行くって言ったじゃん?」

≪はい≫

「だからさ…3年生になったら本格的に受験勉強しないといけなくて…」

≪あっ、そうですよね!≫



小糸ちゃんが気丈な感じで言う。



「ごめんね…。多分、今ほどたくさん会えなくなると思う」

≪大丈夫です、応援してます≫



ありがたいなあ…。



ほんと、ごめんね…。