カリスマCAMPARIソーダ




葛根湯作りに専念していると、違う台にいた乙菱が、後ろからこっそりと話しかけてきた。


「ごめん百奈。どうしよう。あたしの桂皮がなくって、」

「え?」

「……余ってない?」
 
「……最初からなかったの?」

「ううん、来た時はあったはずなのに。亘君と話してる間にどっかいっちゃって。」


乙菱のいた台の方を見れば、そこには亘君の背中と、向かい側でヒソヒソ話をしている女の子2人を見つけてしまった。


大学生にもなって稚拙な嫌がらせだなんて、薬学の神と葛根湯の開発者が聞いて呆れるって。


彼女たちの様子を見に行こうと自分の台から離れれば、鹿助君が「は?」と不思議そうな声を出した。


結んだロングのゆるパーマを揺らす2人組の横から
、可愛くずいっと上目遣いで挑む。


「ねぇえ〜、乙菱の細くて長い桂皮がなくなっちゃったんだけどぉ。2人ともどこにあるか知らなぁい〜?」
   

目をしぱしぱさせて、ビューラーいらずの天然まつ毛を見せつけてやる。


彼女たちは磯村先生のゼミ生だ。最近乙菱に、すれ違いざまに悪態を吐いている彼女たち。


彼女たちはすでにアルコールランプで生薬を熱湯抽出中。正直、証拠なんてどこにもないけれど、私の勘は疑うことを知らない。