Music of Frontier

「ところで、俺は自他共に認めるスイーツ好きですが…。ルクシーは何が好きなんですか?」

…何が好き…って。

お見合いで言う、ご趣味は?みたいなもんか。

「あ、もしかしてルクシーもお菓子ですか?」

「いや…俺はスイーツ男子ではないから…」

スイーツも…嫌いではないが、ルトリアほど熱をあげている訳ではない。

強いて言うなら…俺が好きなのは…。

「…そうだな…。ちょっと待ってな」

「?」

俺は立ち上がって、部屋のラックにたくさん並べてある「それ」を手に取り、ルトリアに見せた。

俺のコレクションの一つだ。

「ルクシー…。これって…」

「CDアルバム。俺の好きなバンドの」

「へぇ…。聴いてみて良いですか?」

「良いよ」

俺はCDプレーヤーにCDをセットして、再生ボタンを押した。

俺の好きなバンドだが…ルトリアはどうだろうか。

「どう?感想は」

「へぇ~…。俺、こういうの初めて聴きました。結構良いもんですね」

ルトリアは、この当時から帝国騎士になる為に毎日訓練漬けだった。

従って、こういったものを聴く趣味がないのは当然だった。

もしこのとき、ルトリアが母親にねだったとしても、与えてもらえなかったに違いない。

「ルクシーはこういうものが好きなんですね?」

「あぁ。よく聴くんだ…」

「じゃあ、あれですか。ライブとか行ったことあるんですか?」

「ライブか…。行きたいけど、さすがにまだ行ったことはない」

母に「行ってみたい」と言ったことはあるが、「もう少し大きくなったらね」と言われた。

裏を返せば、もう少し大きくなったら行っても良いということだ。

一応うちも格式高い貴族…のはずなのだが、こういうところ、うちは結構寛容なのだ。

母の方針である。

「でも、ライブのDVDは持ってる。観てみるか?」

「え、そんなのあるんですか?是非観たいです」

思いの外ルトリアが乗ってきてくれたので、俺はDVDデッキにDVDを入れた。

俺はもう何度も観たけれど…ルトリアの感想はいかに。

「へぇ~…。良いなぁ、盛り上がってて…楽しそう」

「だろ?」

「これ、実際に行ってその場で見たら、物凄い臨場感でしょうね」

「うん。俺もそう思う」

死ぬまでに、是非とも一度は行ってみたいものだ。

俺は行けると思うが…ルトリアはどうだろう。