君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

部屋を出ると、いつものアキがそこに居た。
私は思わず、そのままアキを抱きしめた。
アキも何も言わずに、抱き締め返してくれる。

「会ってきたよ……。私と同じ歳なのに、私よりずっと苦しいはずなのに、私よりずっと大人だったよ」

「きっと強がっていただけだよ」

さぁ、もう行こうとアキは手を繋いで歩き出した。
さっき私の髪をかきあげて、キスをしてきた時、触れた手とは全然ちがう。
ガッチリした手。安心する手。
なのにそれが今は寂しい。

「私、この時代の本当のアキに出会えてよかった」

「あとはさゆがそのまま8/16までの時間を穏やかに過ごしてくれれば、あの僕も君も助かるんだ」

「そう、だね。……大人しくしてる」

私はアキに初めて嘘をついた。
だって私たちが救われる世界は、代わりに奏がいなくなる世界。

ーーアキに頬にキスされて、気がついたんだ。
これは”好きだ”けど”愛しい”じゃないって。

私が愛しいのは、本当に愛したいのは、アキじゃなかった。

私にとって愛しいって、ただ愛されるだけじゃない。どんな犠牲があっても、弱いとこも強いとこも全部ひっくるめて守りたい、そんな人なんだ。

それはーー奏。
私は奏の未来を、心から守りたい。