君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

アキはポンポンと頭を優しく撫でてくれる。

「君の中には、いちばん大切な人が居て、その人はもう何があっても揺らがない。なら、僕じゃなくてその人のために時間を使うべきだ」

「そんなことない! 私はアキが好きで、優しくて、いつも守ってくれて。肝心な時にはそばに居てくれるスーパーヒーローみたいで。魔法みたいに私を笑顔にしてくれて。大好きで……」

私は思わず、未来から来たアキについて話してしまった。

「君が何を言わんとしてるのか、何となく分かるよ。僕も同じ気持ちだから」

ーーねぇ、一つだけお願いを聞いてくれる?
アキはそう言って、左側を指さした。
その方向を向いた瞬間、髪を耳にかけて、アキは私の頬にキスしてくれた。

「さよなら、僕の初恋さん……」

アキは相変わらず微笑んでいた。

「アキ、私たちきっとまた会える。この先のずっと未来で。信じていて。私を好きになってくれてありがとう。そしてーー」

私は涙をこらえて、必死に笑顔を作って言った。

「さよなら、私の王子さまーー」

そう。アキはなんでもできる魔法使いなんかじゃなくて、王子さまだった。
だけど、私はお姫様なんかじゃない。
だから私には遠くて、届かない、王子さま。


振り返らずに、そのまま部屋を出た。