君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

あっという間に病院に戻ってきた。
いつもの病院なのに、ここに”アキ”がいる。
そう思っただけで胸が苦しい。

特別棟の個室。
そこは普段行かない場所だった。
扉の前に立ちドアノブに手をかけようとした時にアキが手を抑えた。

「さゆ。俺は、ここまでなんだ。この世界では決まりがあって一緒には行けない。振り向かずに入れ。出る時も同じ。戻ってきたらまた”俺”はここにいる」

「うん。分かったよ。行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

背中から聞こえた、アキの声は優しかった。
コンコンとノックをして、そのまま部屋に入る。
カーテンがしてあったけど、やがて奥に入るほど、寝ている彼の姿が浮かび上がってくる。


ーーそこにいたのは私と同じ14歳の、アキ。


「こんにちは、君は誰?」


透き通った瞳が、私を見つめてくる。

「はじめまして。私は本田さゆって言います。アキさんですよね? 突然来てごめんなさい」

「すごい震えてる。怖いの? おいで、大丈夫だよ」

私がアキのベット際に近づくと、全て分かったようにアキは抱きしめてくれた。

「アキさん……わ、私」

「さゆさん、ありがとうね」

「ちがうんです。私、貴方を裏切るかもしれないって言いに来たんです。何を言ってるか分かんないと思うけど、私の大切な人を守る為に、貴方は救われない可能性があるんです」

「いいよ。そんなことをわざわざ伝えに来てくれるだけで君は世界で誰より誠実だよ」

「そんなことない」

「あるよ。大丈夫。さゆさん、君は君の思うのまま、真っ直ぐに生きて」

「アキ……」

これがこの世界の本当のアキ。
今にも消えてしまいそうなのに。こんなに優しい。

「ハハ……不思議だな。君が初めて入ってきた時から、体が熱くて止まらないんだ」

「わ、私も」

「もっと早く出会いたかったね」

「また、来る」

「来なくていいんだ。もうここには来なくていい」

「なんでそんなことを言うの?」

アキは微笑みながら、ここに座ってと言ったから。
私はアキの隣に座った。