君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

はる兄の車に5人で乗ると、ちょっとした満員電車を思わせた。
もちろんはる兄の助手席には陽菜が座って。
後ろに右から奏、私、アキの順で座ってる。

「なんか狭ーい」

「さゆが太ったんじゃね?」

「さゆの体重はーー」

「アキ!! それは言ったらまじで許さない」

「IQは良かったのに……」

「あははっアキ先生、女の子の気持ち、全然分かってない」

車の中はなんだかあたたかい雰囲気で満たされていて。
この5人でいつまでも一緒にいられたらいいのに、自然とそう思ってしまった。

こんな曖昧な関係なままじゃいられない。
いつかは終わりが来ること、ずっと知っていたから。

だからこそ、言いたい。

「ねぇ、皆。私は今日のこと忘れないよ」

「さゆ、いきなりどうしたの」

「このまま時間が止まっちゃえって今、思ったの」

「さゆちゃんはこれからいくらでもこんな時間を過ごせるよ。奏が薬を開発して、陽菜もさゆちゃんも治って、またみんなで遊ぶんだろ」

「はる兄……ありがとう」

陽菜も、奏も、アキも、そしてはる兄だって、そんな未来が来ないこと、もう解ってる。
過ぎ去っていく時は早くて、どれだけ望んでも間に合わないことーー
それでも、ひとり、嘘でも信じてくれる人がいる。

「うん、医者なら俺がいる。晴も医者になる。まだ頼りないけど、奏もいる。さゆも陽菜も大丈夫だ!」

「アキ……」

涙が自然と溢れてくる。
陽菜も奏も隠れてだけど、少しだけ泣いてるのが見えた。

「こら、アイス食べるんだろ?」

「うん、食べるよ。めっちゃ食べる」

「陽菜も!」

「俺は参考書も見に行く」

「なら、晴と俺で特別難しいやつ、選んでやるよ」

「それ大学とかの……」

「そうだが?」

「俺、次に進学するの高校ですって!」

流石に生き急ぎすぎか、とアキは笑った。
本当にいつまでもこんな時間が続いていけばいい。
そう願わずにいられない。
だけど有限だからこそ、こんなにも愛しいんだ。