君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

コンコンと部屋をノックして、私は資料室に入った。

「あ、さゆ! おかえりー」

「ただいまー。陽菜、大きい声が廊下まで響いてたよ」

「いっけない、ここ病院だった。陽菜、おしとやかにする」

「ふふ、今更遅いって」

真面目な顔している陽菜が、可愛くておかしくて。
なんでこんなにまっすぐな子と好きな人が同じになっちゃったんだろ。
こんなの勝てっこない。

「おい、さゆは大丈夫だった?」

「奏。うん。アキ先生が問題ないって。海にもみんなで行っていいよって」

「海行くの? 僕が運転しようか」

「え、はる兄いいの?」

「うん。でも医大生はめちゃくちゃ忙しいからな。盆休みでいい?」

「ははー! さすがは陽菜のはる兄さま!!」

そこで私はハッとした。
アキが告げた、私のリミットの日。
8/16だって言ってた。

「はる兄!」

「うぉわ。なに? さゆちゃんが大声出すの珍しいな」

「海行くの、8/15がいいです!」

「陽菜と奏がそれでいいなら、僕は構わないけど」

「「別にいいよ」」

2人は不思議そうにしてたけど、これで安心した。

「日付決まってた方が楽しめるじゃん! ね!」

「さゆは俺と自由研究のスケジュールもな」

「おわ、宿題はちょっと」

どうせやっても意味ないし。

「まぁまぁ。僕が帰りみんな送ってくよ。そろそろ車行くぞ」

そこでガラッと扉があいて、アキが白衣を脱ぎながら入ってきた。

「晴、仕事終わったから俺も乗せてけ」

「アキさん、お疲れ様です。もちろんどうぞ」

ギロッとアキが奏を睨んで、奏も睨み返してる気がしたけど。
気が付かないふりをした。

「わーい! サーティワン! 奏会長、陽菜は5段くらい乗せていい?」

陽菜があえて空気読めないことを言う。

「いや、そんなに奢んねぇからな」

「奏、私は31段!」

「全部乗せかよ!(笑)」

みんなが暗い気持ちにならないように、陽菜の冗談に私も乗っかった。