君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

「こぉら、陽菜ちゃん。また検診逃げたでしょ……って、そんな、チワワみたいに震えなくていいから」

「だって怖いんだもん。痛いのいや。怖いのいや。苦しいのもいや」

「はいはい、今日はそういうのはやらないから」

東条先生は優しくて、アキとは全然違うなと思いながら、私は陽菜のそばについていた。
陽菜をなだめながら診察が終わると、あの時と同じように東条先生はまた私の方を向いた。
アキのことだろうな。

「さゆちゃん、アキならとなりの部屋に待ってるよ」

「陽菜も一緒に来る?」

「陽菜はお医者さんはもういい。おなかいっぱい。はる兄たちのところ先に行っててもいい?」

「うん。分かった」

診察室を出て、陽菜と分かれた。
隣の部屋かぁ。ふぅ、とひとつため息をついた。
するとガラリと診察室の扉が開いた。

「やっぱりさゆか。ほら、入れ」
「なんで分かったの」
「さゆ専用レーダー」
「なにそれ」
「愛してるってことだよ」

くさいセリフが似合っちゃうから、アキはにくい。
アキはすぐ怒るし怖いのに、優しくする時も直球なんだもん。
こんなの卑怯だよ。
私はおとなしく診察室の椅子に座った。