君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

たたたっとフェンスの所まで走り出す陽菜。

「こぉら陽菜、走っちゃダメ」

優しく注意したって聞きやしない。
いつもの陽菜。
ーーそう思ってた。

「ねぇ、さゆ。陽菜、さゆに伝えなきゃいけないことがある」
「なぁに?」

陽菜の真剣な瞳。
ふわっと揺れる風になびいた陽菜の髪は、悲しいくらいに綺麗だった。

「ーー陽菜も、奏のことが好き。出会った時からずっと奏会長のことが大好き」
「えーー……」

全然、知らなくて。
私たち、小学校の時に病院で出会ってからいつも3人で遊んでいたけど。
陽菜はそんな素振り、見せなかったじゃん。

「どうして……奏なの?」

私は思わず陽菜に聞いてしまった。
陽菜は俯きがちに、懐かしそうに何かを思い出してるみたいだった。

「あのね……陽菜がここで発作が出て、泣いてた時、奏会長が来てくれた。確かさゆと二手に分かれてかくれんぼしてた時だった。その時に背中をさすりながら言ってくれた『陽菜は死なない。だから何も怖くないよ』って。嘘でも嬉しかった。胸の中に宝物みたいに光ってる」

「そっかぁ……。あのね。陽菜がホントのこと話してくれて嬉しいよ。私も奏のことをまだ好きなの知ってるから、遠慮させてたんだよね?」

「うん、してた」

「でもそんなの嬉しくない。私たちは親友だもん。何でも話して、陽菜が幸せなら私も幸せだし。それに、これで本気の勝負ができるね、陽菜」

「そう……? 陽菜が奏会長好きなの、嫌じゃない?」

「嫌じゃない。嬉しい。親友と同じ人が好きなのは嬉しい」

「でもライバルだから、これからはちょっとだけ複雑になるかも」

「それでも陽菜は私に話してくれたから。それでいいんだよ」

私は陽菜を抱きしめた。
温もりが愛しくて、やっぱり大好きで大切な親友だよ。

「うぇーん、ずっと怖かった。陽菜を嫌いにならないで!」

「そんなことあるわけない、大好き、陽菜」

私はどんな形になっても、陽菜の味方。
そのままの太陽みたいな陽菜でいて。
私はそれだけを願っていた。