君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

はる兄は病院の駐車場に車を停めた。
関係者の方から入っていいと私たちを誘導した。
私は特にアキに用事ないからなぁ。
でも陽菜についてないとまた泣くか。
コツコツと病院の床の上をローファーで歩く音が響く。

「さゆ、絶対そばにいてね。会長はどっかいってていいよ」
「こぉら陽菜、失礼だろ。奏は良かったらうちの系列の薬科系の大学の資料あるけど、見る?」
「あ、見たいっす」
「じゃあ陽菜達を各々東条先生のとこに置いたら、一緒に行こう」
「え、待って。はる兄私はアキ先生の診察入ってないよ」
「ついで。アキ先生には連絡入れてるし待ってる。これで次しばらく来なくていいならいいじゃん。」

そう言われれば、まぁそうかな。
もう夏休みになったらほとんど時間ないし、早めに済ませて時間まで自由にしていたい。

「陽菜、さゆがいないと診察受けないから!」
「分かったよ。陽菜と一緒に行ってその後アキ先生んところ行くよ」
「やったぁー! じゃあ、はる兄うちら二人で行けるから! 会長のこと連れてってあげて」

そう言うと、奏とはる兄は一度離れた。
その背中をしばらく黙って見守ってた陽菜。

「ねぇ、会長さ。あんなこと考えてたんだ……」

急に陽菜は泣き出した。
私も釣られそうになったけど、我慢して陽菜の頭を撫でた。

「さゆ、少しだけサボっていい? ちゃんと行くから屋上に少しだけ行かない?」
「うん。泣いたままだと少し恥ずかしいもんね」
「そうそう、気分転換。うちら二人とも目、真っ赤だよ(笑)」

屋上のドアを開けた。
よく晴れた、茜空が広がっていた。
きっと明日も晴れる。そう思った。