チュンチュンと、鳥の鳴き声が聞こえてカーテンから漏れてるのだろうか、朝日が眩しい。
ゆっくりと目を開けると……

「さゆ、おはよう!」
「目が覚めたなら診察させろ」

そうそう、見慣れたふたりの顔が……って

「うわぁぁぁ!!!」

私は布団を持ったまま起き上がり、そのまま3歩後ずさった!

「さゆ? どうしたんだ?」
「そうだ。体調が悪いなら早く言え」
「いやいや。2人がいることに驚いたんだって」
「えぇ、だって昨日からそういう話だろ? さゆってこんなに頭悪かったっけ? アキ先生」
「いや、さゆはIQ的には正に中の中くらいだ」
「いやアキそれは微妙に私に失礼な気がするし、とにかくそのずっと持ってる聴診器しまって」

なんでこの2人……一緒に住むのは分かったけど。
当たり前のように人の寝顔ずっと見てんのよ。

「さゆー、コイツと住むのはマジ無理だけど。さゆの身体は心配だからよく診てもらえよ。俺、一回部屋出てるから」
「あ、うん。分かった」

奏が部屋を立ち去るのを見送る。

「アキ、昨日は急に来すぎなんだよ。奏すごーく不服そうじゃん」
「そもそもさゆと二人で住むのは俺以外に有り得ない。過去でも今でも未来でもな」
「それってさ、嫉妬?」
「さぁな。ほら、診察する」

先生が黙って聴診するのを待っていた。

「どう?」
「いつも通り、良くない」
「はぁー手厳しいこと。自分じゃ全然平気なのにな」
「それ、慣れちゃってるだけ。普通の人だったら寝込んでる」

そう言えば陽菜も喘息酷すぎて、ヒーヒーしながらこれが普通とかよく言ってたな。確かにそんなものなのかな。

「それでも、アキがみてくれたら安心だよ。なるべく自由な時間、長く残るようにしてよ」
「未来は覆らないけどな」
「そこをなんとか」

拝むようにすると、アキは首を横に振った。

「逆に覆らないことを願ってるんだ。俺はさゆが変わらずに今をすごして、この先もずっと生き続けてくれることを」

でもそれは、奏の死がもたらしてくれる、悲しい未来。

「じゃあ、私が倒れても泣かないでね」
「泣くよ、あいつも俺も大泣きする」
「それも決まった未来?」
「あぁ、だから目一杯楽しめよ。この夏をさ」

アキは立ち上がり、カーテンと窓を開けた。

「ほら、今日から梅雨明けだってさ」
「空がきれいだね。ねぇ、具体的に何月何日なの?」
「ん?」
「私が倒れて、奏の心臓が移植されるまで目が覚めなくなる日」
「……8/16だ」
「そう……ありがとう」

それって長いのかな、短いのかな。
心臓からとくとく音がする、私の心臓。
音が響く。まだ響いている。
でもこの夏で終わる。
君を思うと、胸がぎゅっと痛くなる、この痛みさえも終わる。