君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

すぐに我に返って、私は謝った。

「私もう帰りますから。陽菜、また明日」
「うん……またね」

ガラリと診察室の扉をあけると、そこにはアキ先生が立ってて勢いでぶつかった。

「っぶね。さゆ、お前いま走ろうとしてたな?」
「……なんで」
「隣の診察室から聞き慣れた声がしたから」
「……もう、いいのに」
「ヨシ、晴たち。こいつはちょっと預かるから。じゃあまたね」
「あぁ、頼んだ」
「アキさん、お疲れ様です」

そのまま手を引かれて、隣の診察室まで引っ張ってかれる。
診察室に入るとベッドに寝るように言われた。
抵抗してももう無駄なので言うことを聞く。

「とりあえず胸の音を聞かせてくれ」
「いや」
「この間はカッとなって悪かった」
「許さない」
「じゃあ聴診はいいから……薬は飲んでるか。俺、いつもちゃんと余分に出しておいたよな?」
「……しないで」
「ん?」

私は起き上がって言った。

「心配しないでいいよ。もう残りの時間は好きに生きたいから。もうここにも来ないから」

私はそのまま診察室の扉を開けて出ていった。

「さゆ!」

そんな必死に呼ばないでよ、涙止まらなくなるじゃん。