そう言われると、心からの涙があふれる。

「もういいの、どうせ死ぬんだから」

私はいつの間にか、人生なんてこんなもの。
そう思ってた。
でも、”こんなもの”以上の現実がある。
アキが言ったことはきっと真実になる。
私は、決めなきゃいけない。
泣いてばかりじゃだめなのにーー。

「うわぁーん」

今はアキに掴まって、泣くことしかできない。
アキは頭を優しく撫でてくれる。
それがあまりにも優しくて、手馴れているのが悔しい。

「アキ。私はきっと何度繰り返してもきっといつかは貴方を選ぶ。心から、愛してる」
「俺もだよ」

切ないくらいに、苦しい世界で、魔法が解ける前に私はアキに想いを告げた。
アキを愛してる。
今の私もこれから先の私も、一番に。

「だから。見ていて、魔法がなくても私きっと成し遂げるから」

だけど、明日になったらきっと変わりたい。
夢のような光の中で、私たちはそれぞれにずっとそう願っていた。


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帰る前にもう一度トイレに行くと言った、さゆを見送り俺は園外のベンチに座った。
全てを知られた今、もう何も怖くない。

さて、そろそろ来るかな。

「ーーアキ先生」
「やぁ。奏くん。こっそり着いてきたの」
「ねぇ、その奏くんっての止めてよ」
「何だよ、奏」

冷たい目で彼を見返す。いつかはこいつは死ぬ。
その心臓はさゆにわたる。
情けをかけない。

「さゆは大丈夫だった?」
「あぁ」
「朝、言っただろ? もう時間が無いって。さゆのために俺に出来ること、まだなにかある?」
「ーー君が君でいることだよ」

残酷なくらい、さゆを愛し続けることがいずれその未来につながっていく。

「俺はあいつが好きだ。なんでもしてやりたくなるんだ。先生は医者だろ? 頭いいんだろ。なんか方法があるなら教えて……ください」

奏は頭を下げた。
すぐに頭をあげるようにグイッと持ち上げる。

「そろそろここにさゆが帰ってくる」
「今は見つかりたくない」
「なら、王子様は舞踏会にもどりなよ。まだ、さゆの魔法は解けないから」

彼は不満そうに頭を下げて、またどこかへ消えていく。
きっと答えが欲しかったのだろう。
だが、事故が起きると知ったら彼は今にも自殺しかねない。そんなやつだと思ったから。
一途で、バカで、優しい奏。
だから、俺は何も言えなかった。