パレードは夢のように綺麗で、あっという間に終わってしまった。そろそろ帰らなければ。お母さんももしかしたら帰ってきてるかも。
「もう、夢の時間はおしまいだね」
「そうだな。でもまた、何度だってさゆの好きなところへ連れて行ってやるよ」
「ふぅん。さすが未来の旦那様は、わがまま聞き放題だね」
「こら。調子乗んな!」
おでこをゴツンとデコピンされる。
いてっと声が漏れる。
また、雨が降りそう。
早く梅雨が明けてくれないかな。
そしたら、奏と陽菜と沢山遊べる夏休みもやってくる。
「じゃあセンセ、お土産もたくさん買ってかえろ!」
「はいはい。お腹はもう平気か?」
「うんっ」
先生は暖かい手のひらをまた私に向けてくれる。
お土産のお店の前で、ふと私は立ち止まる。
「あ、やっぱり私、最後はあそこ行きたい」
私はシンデレラ城を指差す。
綺麗にライトアップされたその城は、本当に舞踏会が開かれていそうな気がした。
「じゃあ行きましょうか、シンデレラ」
「先生……いやアキ、ありがとう」
アキはハッとした顔をした後、少し懐かしそうな顔をして泣きそうになっていた。
きっと私のはるか先の未来の私を思い出したんだ。
シンデレラ城の前に着く。
「アキ、私が生きてたら嬉しい?」
「そんなの決まってるだろ。アホなのか?」
「違う。でも今、目の前にいる私は先生を一番に選ばないかもしれないよ?」
それを聞いて、切なげに笑ったアキ。
「それでも、俺は何度でも言うよ。さゆが生きていてほしいって」
「まだ何か私に隠してる」
「なんでさゆはこういうとこだけ鋭いのかなぁ」
「ほら、隠さずに言って」
「言えない」
先生の方がよっぽど頑固だ。
私は先生の足をバシッと蹴る。
さっきのデコピンのやり返しだ。
「ーー奏に、なにかあるの?」
「やっぱ、バレたか」
「そりゃあね。あの言葉、奏と私しか知らない秘密基地のこと、見てきたんでしょ」
「そうだよ。この世界線はあの子が鍵だよ。あの子がすべて」
「どういうことなの?」
アキはまた黙った。
言ってしまったら全てが崩れるような、そんな話なんだって何となくわかったから。私は黙ってアキの目を見つめていた。
「奏くんの心臓が、鍵だ」
「えーー?」
「奏くんの心臓はさゆに移植される。桜の降る日。事故にあった奏くんは臓器提供の意思表示カードを持っている。きっといつかのさゆのために。そう思っていつも持っていたんだろう」
「そんなの、嘘だ。嘘だよ!!」
私はぜんっぜん嬉しくない。
奏の心臓をもらって生きる未来なんて。
そんなの、嬉しくない。
「その時のさゆにはもう選ぶ権利すらない。自由に動けるのはこの夏が最後で、秋以降は殆ど入院してだんだん身体が弱っていく。動くことも、出来なくなっていく」
「なんで!! じゃあ先生がもう一度手術して治してよ!」
先生はゆっくりと首を横に振った。
「それじゃあ、また同じことを繰り返すだけだ。さゆが誰を選ぶにしろ、出産には耐えられないし、だんだん体は弱っていく。なぁ、分かるだろ? さゆのお父さんのように。医学は万能じゃないんだ」
「だからって、私は奏が……死んじゃうなんていや。絶対絶対いや!!」
私がそう叫ぶと、先生は何も言わずに私を抱きしめてくれる。
「いい。それでいい。たくさん泣いて、一緒に生きよう。お願いだから。他の何を失ったとしても、”オレ”は、さゆに生きていてほしい」
「もう、夢の時間はおしまいだね」
「そうだな。でもまた、何度だってさゆの好きなところへ連れて行ってやるよ」
「ふぅん。さすが未来の旦那様は、わがまま聞き放題だね」
「こら。調子乗んな!」
おでこをゴツンとデコピンされる。
いてっと声が漏れる。
また、雨が降りそう。
早く梅雨が明けてくれないかな。
そしたら、奏と陽菜と沢山遊べる夏休みもやってくる。
「じゃあセンセ、お土産もたくさん買ってかえろ!」
「はいはい。お腹はもう平気か?」
「うんっ」
先生は暖かい手のひらをまた私に向けてくれる。
お土産のお店の前で、ふと私は立ち止まる。
「あ、やっぱり私、最後はあそこ行きたい」
私はシンデレラ城を指差す。
綺麗にライトアップされたその城は、本当に舞踏会が開かれていそうな気がした。
「じゃあ行きましょうか、シンデレラ」
「先生……いやアキ、ありがとう」
アキはハッとした顔をした後、少し懐かしそうな顔をして泣きそうになっていた。
きっと私のはるか先の未来の私を思い出したんだ。
シンデレラ城の前に着く。
「アキ、私が生きてたら嬉しい?」
「そんなの決まってるだろ。アホなのか?」
「違う。でも今、目の前にいる私は先生を一番に選ばないかもしれないよ?」
それを聞いて、切なげに笑ったアキ。
「それでも、俺は何度でも言うよ。さゆが生きていてほしいって」
「まだ何か私に隠してる」
「なんでさゆはこういうとこだけ鋭いのかなぁ」
「ほら、隠さずに言って」
「言えない」
先生の方がよっぽど頑固だ。
私は先生の足をバシッと蹴る。
さっきのデコピンのやり返しだ。
「ーー奏に、なにかあるの?」
「やっぱ、バレたか」
「そりゃあね。あの言葉、奏と私しか知らない秘密基地のこと、見てきたんでしょ」
「そうだよ。この世界線はあの子が鍵だよ。あの子がすべて」
「どういうことなの?」
アキはまた黙った。
言ってしまったら全てが崩れるような、そんな話なんだって何となくわかったから。私は黙ってアキの目を見つめていた。
「奏くんの心臓が、鍵だ」
「えーー?」
「奏くんの心臓はさゆに移植される。桜の降る日。事故にあった奏くんは臓器提供の意思表示カードを持っている。きっといつかのさゆのために。そう思っていつも持っていたんだろう」
「そんなの、嘘だ。嘘だよ!!」
私はぜんっぜん嬉しくない。
奏の心臓をもらって生きる未来なんて。
そんなの、嬉しくない。
「その時のさゆにはもう選ぶ権利すらない。自由に動けるのはこの夏が最後で、秋以降は殆ど入院してだんだん身体が弱っていく。動くことも、出来なくなっていく」
「なんで!! じゃあ先生がもう一度手術して治してよ!」
先生はゆっくりと首を横に振った。
「それじゃあ、また同じことを繰り返すだけだ。さゆが誰を選ぶにしろ、出産には耐えられないし、だんだん体は弱っていく。なぁ、分かるだろ? さゆのお父さんのように。医学は万能じゃないんだ」
「だからって、私は奏が……死んじゃうなんていや。絶対絶対いや!!」
私がそう叫ぶと、先生は何も言わずに私を抱きしめてくれる。
「いい。それでいい。たくさん泣いて、一緒に生きよう。お願いだから。他の何を失ったとしても、”オレ”は、さゆに生きていてほしい」


