君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

朝からなんか調子は悪いと思ってたけど、トイレに行って原因が分かった。予定より随分早く生理が来てた。急いで買ったナプキンを当てながら私は思う。このままいつも通りだとお腹痛くなってきちゃうよね。しかも、いつもの薬以外、鎮痛薬とか持ってきてない。

「はぁ……」

ため息が漏れる。先生に素直に伝えて、ドラッグストアでも連れて行ってもらうしかないかな。そう思いながら、頼まれた水とポカリを買って、先生の所へ戻った。

「ただいまぁ」
「おかえり。さゆ、どうかしたか?」
「ううん。これ。ポカリ」
「ありがとう」

先生につい嘘をついてしまった。

「なんか顔色が悪い。さゆも1口だけのめ」

そう言ってポカリをくれる。
私はそのまま1口飲んだ。
そこからはひたすら黙ってパレードを待った。
お腹がだんだん痛くなってきた。

「やっぱりおかしい。あのどうでもいいことでもバカスカ常に話してるさゆが黙ってる。熱でもあるのか?」
「それ、失礼じゃない!?」

先生はおでこに手を当ててきたけど、そこじゃないよォと思う。

「熱はなし。脈も心音もいつも通り。となると残りは婦人科系か」
「え、なんで分かるの!? きも」
「きもってなんだよ! 医者を舐めんな。で、いつから」
「さっき。トイレで」
「そりゃあ言いたくないはずだな」
「パレードは見るからね!」
「じゃあ質問に素直に答えろ。嘘をついたら即刻帰る。痛みはどのくらい?」
「そこそこ」
「さゆのそこそこは限界近いってことと同義だからな。鎮痛薬は持ってるか」
「いつもと違うから持ってこなかった」

ふむ。と悩む先生。
とりあえずと言って、カバンからゼリーと鎮痛薬を手渡してくれる。
あと上着もお腹の上にそっとかけてくれた。

「ちょっと食べて、痛み止めを飲む。それで様子を見よう」
「先生……ありがとう」

準備とか言うレベルじゃないよこんなの。
何があっても護ってくれる。
先生には”覚悟”があった。
私、全然、先生のこと分かってなかった。