君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

「先生、次はパレードやるみたいだよ」
「そっか。俺もランドなんて小さい頃来た以来見てないな」
「なら見よ見よ。この辺で待ってるとキャラクターが通るみたい」

そこは何もない道路なんだけど、目印?見たいのが敷かれてて、並ぶならここの内側で待っててくださいって感じで。何人かの大人の人達が待ってた。

「さゆ、レジャーシートあるか?」
「タオルしかない」
「パレードまであと何分?」
「1時間くらいかな」
「そっか。じゃあタオルでいい。座って待とう」
「うん」

先生はこういうの、絶対嫌って言うと思ったのに。
大人しく、私が敷いたタオルの上に腰をおろした。

「さゆ。少し日がでてきたから、先にトイレとか済ませとけ。あと俺の分のポカリみたいなのと水も買ってこい。俺がここで荷物は見てるからゆっくり行けよ」

先生が10分くらいしてそう言った。
私が外で待ってるのに消耗していることにばれている。
それっぽいお願いされたら席を立たないわけに行かない。

「分かった」

そう行って、立ち上がろうとしたらクラっとめまいがした。
あれ、いつもこんなことないのにと思ってるうちに、先生が私の身体を抱きしめて受け止めてくれる。

「大丈夫か?」
「……うん。ちょっとだけ目眩しただけ」
「もう止めよう、そう言いたい。医者として」
「やだ」
「だからさゆを好きな人として、今は見送る」
「うん」
「幸せでいて欲しい」
「私も、幸せでいたいよ」

そう言って、ゆっくりと手を離し見送る先生が思う幸せと、私の胸にある幸せはきっと同じじゃない。
だって私にはもう時間が残ってないから。
曇り空とその間から差し込む日光がまるで私と先生の心そのものみたいだった。