君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

次はアトラクションでも、心臓に悪い系のやつ。
ちょっと怖かったけど、どうしても一度だけ乗りたいって言ったら先生が許可してくれた。

「世界中探してもオレだけだぞ。許可すんの」
「だね」
「元気になるまでは最初で最後だからな」
「分かってるよ」

先生は手を繋いでくれた。
そしてまた水で濡れる系の、ジェットコースター。
途中で落ちる時にパシャって写真撮られたからピースしてやった。
乗る前は手に汗かいてたけど、乗ってみたら全然怖くなかったや。

「先生、楽しかったね」
「さゆはどんだけ濡れるの好きなんだよ」

先生は水滴を手で払って、頭をフリフリと横に降ってて可愛かった。
私は持ってたハンカチで濡れてるところを拭いてあげる。
先生はそれをすぐ手で追いやった。

「まず自分を拭け。そしてベンチに座れ、今すぐ」

言われたとおりに近くのベンチに座って、自分の体についた雫を丁寧に拭いた。
すると先生は私の手をとって脈を見ながら、いきなり胸に耳を押付けてきた。

「あの先生!」
「黙って」

恥ずかしくて下を向いた。
ほんの数十秒が長く感じた。
みんな、見てるよー。

「うん。大丈夫そう」
「いや全然大丈夫じゃないし。恥ずかしい」
「ランドなんて隙あらばイチャイチャしてるバカップルしかないだろ。聴診器より目立たない」
「そうかもしれないけどぉ」
「それとも医務室に連れて行って、血圧と聴診もしっかり測定して帰るか?」
「やだ!」
「じゃあこのくらい我慢しろ」

うぅ。アキ先生ってなんでいつもこうなのー!?
私の言うこと全然聞いてくれないし。
昨日はお父さんのお墓の前で告白してくれたと思ったのに、あれは嘘かなってくらい冷たいし。
もういいや! ランドはまだまだこれから。楽しまないと損だし!