君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

アキ先生と手を繋いでファミレスに行く。
今日はマグロ丼。
アキ先生はカツカレーの大盛りをバクバク食べてる。
もしかして大食い……?

「アキ先生。今日は来てくれて、マグロ丼もありがとうございました。一生忘れないです」
「さゆがそう言うと、冗談に聞こえないな」
「ハハ、ですね。私、今日親友と話したんです『私たち20歳になる前に死んじゃうね』って。でも私はいいけど、親友だけは……って思っちゃって。そしたらなんか色んな気持ちぐちゃぐちゃになって」

私は胸元に手を添えて、思う。
ああ、どうしてこんなに苦しいのと。

「俺がさゆを死なせない。昔、言っただろ? 俺は12時になっても解けない魔法をかける魔法使いだよ、シンデレラさん」
「そんな魔法、ない」
「あるよ。さゆの目には見えないだけ。いつか証明してみせる」
「じゃあ、あの子を、私なんかじゃなくて、親友を助けて。あの子に魔法をかけてよ、アキ先生!」
「それは無理。だって俺はさゆを死なせないためにここにいる」

どうして……私なの。
私なんかじゃ、生きてたって意味ないのに。

「アキ先生ごめんなさい。わがまま言って」
「良いんだ。さゆ、お前は一人で全部抱え込もうとし過ぎ。持てない荷物は大好きなそうくんとか、俺も持つよ」
「なんで奏のこと?」
「俺は記憶力だけはピカイチなんだよ」
「ふふ、変なの。アキ先生ってやっぱり変」

普通、患者の初恋の人までちゃんと覚えてる?
ありえないでしょ。

「るっせ、デコピンだ」
「痛っ」
「ハハ、赤くなってる」
「医者のくせに患者を傷つけるとは何事ですか」
「今は勤務時間外」
「あー、都合いい時だけ!」

フイっと外を向いたアキ先生の横顔が整ってて。
また先生の好きなとこ、増えてしまった。
勤務時間外のアキ先生も、大好きだよ。