君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

それから10分くらいして本当に家のインターホンが鳴った。
いや、ホントに来た。
アキ先生……だよね?
インターホンの画面にはアキ先生が間違いなく写ってた。

「はぁい、今出ます」
「……さゆ、急ぐなよ」

アキ先生の言うとおりにして、ゆっくりと玄関まで向かった。

「二度目は余裕だな。もう目を瞑っても来れるぞ」
「フフ、何言ってんですか。あがってください」
「さゆの方も落ち着いてるようで、何より」

もう、アキ先生のバカ。
どうしてからかうような言い方ばかりするの。
意地悪、大嫌い。
でも、そういうとこもすき。

「ソファに座ってください。コーヒー入れてきます」
「いや、まず、さゆがここに座れ」

条件反射のように、大人しく言うことを聞き、ソファに座る。

「じゃあ、診察。胸の音だけ、聞かせて?」

アキ先生に優しく言われると抵抗できない。
制服のリボンを外して、ボタンをひとつずつあけた。
胸を開けると同時に、アキ先生の聴診器があたる。
深呼吸して、と言われたのでそのまま従った。
しばらく時間が流れる。
ゆっくりとした2人だけの静寂。

「ドキドキする、アキ先生」
「落ち着いて。そのまま深呼吸」

もう何度、2人でこうしただろう。
なのに何度でも、ドキドキするんだ。