君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

私たちの秘密基地に着くと、雨が上がった。
夕陽が、草むらについた雨の雫をキラキラと照らす。

「わぁ、夕陽キレイ!」
「元気、出たか?」
「うんっ」
「じゃあもっと、元気出るやつ見せてやる。あっち」

と奏が指をさす方を見ると、そこには大きな虹がかかってた。

「虹だぁ」
「キレイだな」
「うん。奏、知ってたの?」
「そんな訳ないだろ。エスパーか俺は」
「ふふ」
「でもーー」
「ん?」
「さゆに元気だしてほしいって心から思ってた。そう、願ってたからかもな」

爽やかな風が二人の間を通り過ぎる。
白い蝶々が飛んでる。
あの時みたいに。
初めて約束した日みたいに。

「さゆ、もっと俺のそばにいてくれないか?」
「え?」
「つまりさ、一緒に暮らそう?」
「え、な、な、いきなし、なんで?!」
「だってーー」

少しだけもじもじして恥ずかしそうにした後、奏はこっちを向いて言った。

「さゆ、捕まえてないと、どっかに行きそうな顔してたから」
「でも、私たち家隣同士だし」
「だからいいんじゃん。好きな時に行き来できるし」
「でも、まだ中学生だし」
「うちもさゆの母親も昔からの顔なじみだから、気にしないだろ何にも」
「そうだけどーー」

ま、ちょっと言ってみただけだ。と奏はぽんぽんと頭を叩いた。

「でも本気で考えといて。答えをちょうだい」
「ーーうん。分かった。すごく考える」

残りの時間は限られてる。
だからこそ、真っ直ぐに伝えてくれる奏が眩しくて。
それにここは約束した場所。
ずっと、一緒にいると。