「そんなのできない。さゆは……奏先輩のことは!! もう、いいの……?」
「奏には私のこと何も言わないで。受験の年だし、邪魔になりたくないから。最近じゃ話もしてないし」
言いにくそうに、でもどうしても、みたいな感じで陽菜はその名前を言った。
昔は”そうくん”と呼んでいたのに、いつの間にか”かなで”と呼ぶようになって。
いつも一緒にいたのに、成長するにつれ少しずつ何かがずれてって、お互いだんだんと別々に過ごす時間が増えていった。
「ーー分かった。でも代わりに陽菜にだけは何も隠し事しないでね?」
「うん。陽菜ごめんね」
「いいんだよ」
ほら、一緒に帰ろっと私は陽菜を促す。
うんっと笑いながら、テケテケと陽菜はついてくる。
ほんとに太陽みたいな子だなと思う。
こんな子がいちばん幸せになって欲しいと心から思う。
帰り道。
「ゴホゴホ……ヒューヒュー」
「大丈夫? 発作だね」
雨の日の陽菜は絶対に体調を崩す。
すぐそばに公園があったからベンチに陽菜を座らせて、背中をさすりながらいつものように吸入するのを手伝う。
「ごめ、ゴホゴホッ」
「今日はなかなか治まらないね。とりあえずはる兄のこと、呼ぶよ?」
私がスマホを取り出すと、陽菜は頷いた。
「もしもし、さゆです。はる兄さんですか。陽菜の発作が治らなくて。いま虹色公園にいます」
それだけ言うと、スマホを切った。
「すぐ車で来てくれるって」
「ハァハァ……ありがと」
「いいんだよ、うちらお互い様だもん」
「だね……」
陽菜が差し出してきた震える手を握った。
「大丈夫だよ、大丈夫」
とはる兄が迎えに来るまで、ずっと繰り返していた。
「奏には私のこと何も言わないで。受験の年だし、邪魔になりたくないから。最近じゃ話もしてないし」
言いにくそうに、でもどうしても、みたいな感じで陽菜はその名前を言った。
昔は”そうくん”と呼んでいたのに、いつの間にか”かなで”と呼ぶようになって。
いつも一緒にいたのに、成長するにつれ少しずつ何かがずれてって、お互いだんだんと別々に過ごす時間が増えていった。
「ーー分かった。でも代わりに陽菜にだけは何も隠し事しないでね?」
「うん。陽菜ごめんね」
「いいんだよ」
ほら、一緒に帰ろっと私は陽菜を促す。
うんっと笑いながら、テケテケと陽菜はついてくる。
ほんとに太陽みたいな子だなと思う。
こんな子がいちばん幸せになって欲しいと心から思う。
帰り道。
「ゴホゴホ……ヒューヒュー」
「大丈夫? 発作だね」
雨の日の陽菜は絶対に体調を崩す。
すぐそばに公園があったからベンチに陽菜を座らせて、背中をさすりながらいつものように吸入するのを手伝う。
「ごめ、ゴホゴホッ」
「今日はなかなか治まらないね。とりあえずはる兄のこと、呼ぶよ?」
私がスマホを取り出すと、陽菜は頷いた。
「もしもし、さゆです。はる兄さんですか。陽菜の発作が治らなくて。いま虹色公園にいます」
それだけ言うと、スマホを切った。
「すぐ車で来てくれるって」
「ハァハァ……ありがと」
「いいんだよ、うちらお互い様だもん」
「だね……」
陽菜が差し出してきた震える手を握った。
「大丈夫だよ、大丈夫」
とはる兄が迎えに来るまで、ずっと繰り返していた。



