今度こそ、湯気の出たブラックのコーヒーを先生の前に出した。
ありがとう、と先生は受け取る。
私は飲めないこと、分かってる。
そのまま先生の前に座る。
「昼飯は食ったか?」
「……まだ」
「じゃあこれ飲んだら一緒に食べに行こう」
「え?」
「俺は料理はからきし出来ん」
「そういうことじゃなくて」
「イヤか?」
「そうじゃないけど……」
アキ先生は不機嫌そうに黙った。
あ、また怒らせちゃうかなと思ったけど、次の瞬間、私のことを真っ直ぐに見つめて言った。
「あのとき、さゆが俺に好きだと言った時のこと。俺は『今はダメだ』と応えた」
「解ってる。困らせてごめんなさい」
「違う。困ってなんかいない。むしろもっともっと俺のことだけを考えて、本気で困らせてこいと思ってた。なのに中途半端に機嫌を伺って逃げるように居なくなって」
「怖くなったから」
「それも違う。さゆは他に好きなやつがいて。身近にいた俺に近寄ってみただけだ。俺はそういうのは許さない。俺のことを本気なら、そういうの全部片付けて、死ぬほど傷付いて苦しんで、俺のところに泣きついてこい。最後には俺がそんな傷ついたお前ごと全部包んでやる。俺だけがそれをできる」
「なんで……」
「さゆのことなら何でも知ってる」
簡単に諦めるなよーーもっともがけよ
そう、アキ先生は言った。
「もっと苦しめ、なんて、先生しかいわないよ」
「それだけ本気だということだ。これからも言葉じゃない。俺自身を見ろ」
「うん、アキ先生……私、胸が張り裂けそうだよ。先生のこと、考えるとすごく苦しいよ」
「それが、本当の痛みだよ。さゆ。さゆの残りの時間はもう一年はない。俺はそれを可能な限り、ひき伸ばす努力をする。けれど、誰とどこで過ごしたいのかは、さゆ自身がよく考えろ」
答えを見つけなきゃ。
いつが終わるその時までに、私だけの答えを。
ありがとう、と先生は受け取る。
私は飲めないこと、分かってる。
そのまま先生の前に座る。
「昼飯は食ったか?」
「……まだ」
「じゃあこれ飲んだら一緒に食べに行こう」
「え?」
「俺は料理はからきし出来ん」
「そういうことじゃなくて」
「イヤか?」
「そうじゃないけど……」
アキ先生は不機嫌そうに黙った。
あ、また怒らせちゃうかなと思ったけど、次の瞬間、私のことを真っ直ぐに見つめて言った。
「あのとき、さゆが俺に好きだと言った時のこと。俺は『今はダメだ』と応えた」
「解ってる。困らせてごめんなさい」
「違う。困ってなんかいない。むしろもっともっと俺のことだけを考えて、本気で困らせてこいと思ってた。なのに中途半端に機嫌を伺って逃げるように居なくなって」
「怖くなったから」
「それも違う。さゆは他に好きなやつがいて。身近にいた俺に近寄ってみただけだ。俺はそういうのは許さない。俺のことを本気なら、そういうの全部片付けて、死ぬほど傷付いて苦しんで、俺のところに泣きついてこい。最後には俺がそんな傷ついたお前ごと全部包んでやる。俺だけがそれをできる」
「なんで……」
「さゆのことなら何でも知ってる」
簡単に諦めるなよーーもっともがけよ
そう、アキ先生は言った。
「もっと苦しめ、なんて、先生しかいわないよ」
「それだけ本気だということだ。これからも言葉じゃない。俺自身を見ろ」
「うん、アキ先生……私、胸が張り裂けそうだよ。先生のこと、考えるとすごく苦しいよ」
「それが、本当の痛みだよ。さゆ。さゆの残りの時間はもう一年はない。俺はそれを可能な限り、ひき伸ばす努力をする。けれど、誰とどこで過ごしたいのかは、さゆ自身がよく考えろ」
答えを見つけなきゃ。
いつが終わるその時までに、私だけの答えを。


